いなか家庭医の勉強ノート

一人前の家庭医をめざして

resilience_研修医のレジリエンスは、医師という木を成長する過程と捉えられる(質的研究)

Winkel, Abigail Ford, Anne West Honart, Annie Robinson, Aubrie-Ann JonesとAllison Squires. 「Thriving in scrubs: a qualitative study of resident resilience」. Reproductive Health 15, no. 1

レジリエンスの中核は医師になる過程である。

・根は家族や地域社会の価値観から発し、木は太陽に代表される原型的な職業的価値観や願望に向かって上方に伸びていく。根は医療コミュニティ内のつながりへと広がり、患者や仕事とのつながりを通して深まっていく。
嵐は逆境、不確実性、課題、価値観の対立で木を揺さぶるが、木が成長するための水も供給する。
・葉は成長のための燃料を表し、このグループが体現する強い決意と、成長する能力を拡大する対処メカニズムの開発の両方を表している。
・じょうろは、プログラム的な介入と前向きな文化が、この成長する実体の進化をさらに育む可能性を示している。


Abstract


背景
医師の幸福は医師と患者の両方に影響を与える。医師の燃え尽き率が高いことを考慮すると、レジリエンスを高めることは優先事項である。効果的な介入を行うために、教育者はレジデント期間中にレジリエンスがどのように発達するかを理解する必要がある。

方法
グラウンデッド・セオリーを用いた質的研究により、研修医におけるレジリエンス生活体験を検討した。産科・婦人科の研修医のコホートを、無作為の強度サンプルとして選択した。全研修年次の研修医18名が半構造化面接に参加した。オープンコーディング、分析的コーディング、主題分析の3段階のプロセスにより、研修医におけるレジリエンスの概念モデルが作成された。

結果
研修医のレジリエンス(回復力)は、医療という仕事に対する研修医の天職に根ざしていることが浮かび上がった。
障害を克服しようとする意欲は、個人のアイデンティティと職業上の理想への憧れから生じた。逆境は、研修医に対処法を検討させ、培わせた。患者や仕事だけでなく、同僚や指導者との個人的なつながりが、ストレスや葛藤を和らげるのに役立った。
この文脈におけるレジリエンスとは、不確実性や逆境との関わりを通して成長する発達現象である。

結論
研修医のレジリエンスは、個人的および職業的アイデンティティに根ざしたものであり、その発達には逆境との関わりが必要である。医療コミュニティ内でのつながり、仕事における個人的な充実感の発見、セルフケアの実践がレジリエンスを高める。

*コメント:医師の燃え尽き症候群は、医師が仕事に対して皮肉や絶望を抱くようになることで起こる。燃え尽きた医師は離職したり、精神疾患を患ったりし、患者のケアに支障をきたす。燃え尽き症候群は医学界では一般的で、医学研修中に増加する。産婦人科では、研修医の半数以上が燃え尽き症候群に苦しんでいる。やりがいのある職場環境、感情的なストレス要因、肉体的な要求が燃え尽き症候群の一因になっている可能性がある。それにもかかわらず、回復力を示す医師もいる。産婦人科の研修で成功している研修医がどのように仕事に取り組んでいるかを理解することは、このような状況においてレジリエンスがどのように発達するかを理解するのに役立つであろう。産婦人科の研修医との面接を質的に分析した結果、研修医のレジリエンスに関する理論が導き出された。この文脈では、レジリエンスは強い個人的・職業的アイデンティティと結びついている。レジリエンスは、研修中に研修医が困難に対処し、対処法を開発し、同僚に支えを見いだし、一人の医師として確かな道を見いだすことで成長する。この知識は、研修医のウェルビーイングの向上を目的とした教育プログラムの決定に役立つであろう。