いなか家庭医の勉強ノート

一人前の家庭医をめざして

Dementia_認知症高齢者に赤ちゃんのように話しかけると、ケアの拒否が増えるかも知れない

SHAW, Clarissa A., et al. Elderspeak communication and pain severity as modifiable factors to rejection of care in hospital dementia care. Journal of the American Geriatrics Society, 2022, 70.8: 2258-2268.

https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jgs.17910

 

Point

入院中の認知症患者は、ケアの拒否Resistance of Care(RoC)を半数近くで示す。引き離す、泣く、物をつかむなどが最も多くみられた。

看護スタッフによるエルダースピーク・コミュニケーションの頻度が高いほど、RoCはより起こりやすく、より深刻であった。

・ケアの拒否は、患者がより強い痛みを感じているほど起こりやすく、また重症であった。

 

背景

ケアの拒否は、認知症患者が介護者の努力に抵抗・反対するときに起こる。病院での認知症ケアを改善するには、ケアの拒否につながる要因、特に修正可能な要因を特定することが必要になる。
エルダースピークコミュニケーションは、認知症のある高齢者に赤ちゃんのように話しかけるコミュニケーションのことである。不適切に幼稚な語彙の選択、、選択肢を与えているように見えても選択肢を制限する質問(例:もう朝食の準備はできているよね)などの複雑なパターン、甲高い歌声のような声やイントネーションがある。このようなコミュニケーションパターンは高齢者に特有であるわけではないが、高齢者はますます無能で依存的になっているという年齢差別的な思い込みにより、このような人々に対してより頻繁に行われている。エルダースピーク・コミュニケーションは、介護施設における認知症患者のケアの拒否先行要因として確立されている。

本研究の目的は、看護スタッフによるエルダースピークコミュニケーションが入院中の認知症患者のケアの拒否に及ぼす影響を明らかにすることにより、これらの結果を急性期医療環境に拡大することである。

 


方法

2019年8月から2020年3月にかけて、大学病院単施設で看護職員・認知症患者を募集した。看護師は神経内科、家庭医療科、内科の病棟で直接ケアを提供した場合に対象とした。認知症患者は、研究に参加した病棟に入院し、認知症の診断があり、入院後ケアの拒否の報告があり、除外すべき特徴がない場合に組み入れられた。認知症患者は認知症以外の神経認知or精神医学的診断がある場合、英語が堪能でない場合、Functional Assessment Staging (FAST)分類で認知症の重症度が軽度以下と判定された場合は除外された。


看護職員と認知症患者とのケア面談を音声記録し、逐語的に書き起こし、年長者の話し言葉の意味的、語用論的、韻律的特徴をコード化した。

ケアの拒否の行動は、Resistiveness to Cares尺度(RTC-DAT)の13項目を用いてスコアリングされた:手足を内転させる、口をつぐむ、泣く、物をつかむ、人をつかむ、殴る/蹴る、引き離す、突き飛ばす、ノーと言う、叫ぶ/叫ぶ、脅す、そっぽを向く。、(1=軽度、2=中等度、3=極端)。ベイズ型反復測定ハードルモデルを用いて、エルダースピークとケアの拒否の有無および重症度との関連を評価した。


そのほか、せん妄の重症度はConfusion Assessment Method-Severity short form(CAM-S)で0~7のスコアで表し、痛みの重症度はPAINAD(Pain Assessment in Advanced Dementia Scale)で測定した。PAINADでは、5つのカテゴリー(呼吸、発声、表情、身振り、慰めやすさ)を観察に基づいて痛みの重症度を評価し、その合計を0~10で評価する。CAM-SとPAINADは筆頭著者が観察ごとに記入した。

 

エルダースピークとしては下記がコード化されている。

エルダースピークの例

結果

最終的なサンプルは、看護スタッフ53名と認知症患者16名で、88件のケアを受けた。看護スタッフのサンプルは、スタッフナースと看護助手が同程度に分かれており、大半が女性、白人、ヒスパニックやラテン系ではなかった。看護スタッフは概して若く(M=29.7歳、SD=10.9)、医療経験は5年未満がほとんどであった(62.3%)。


73人の認知症患者のうち、ケアの拒否を示さなかった(58.3%)、軽度認知症未満であった(25.0%)、英語を流暢に話せなかった(8.3%)、除外診断があった(8.3%)という理由で半数弱(n=36)が除外された。

 

対象となった認知症の半数以上(n=21)は、退院前に法定代理人と連絡が取れなかった(57.1%)、研究参加に興味がなかった(38.1%)、同意前に死亡した(4.8%)などの理由で登録しなかった。

登録/非登録の認知症患者間に、性別、人種、民族、主な認知症診断、年齢における差は確認されなかった。

 

対象の認知症患者

 

表2 ケアにおける拒絶反応(RoC)の有無と重症度:入院中認知症患者のほぼ半数(48.9%)でケアの拒否あり

表3 介護拒否の有無と重症度 エルダースピークが10%減少すると、RoCは77%減少、重症度は16%減少した。 痛みの重症度が1単位減少すると、RoCは73%減少し、重症度は28%減少した。

エルダースピークと痛みのレベルが高いほど、ケアの拒否の重症度が高くなる

 

ディスカッション

疼痛レベルが低い場合でもエルダースピークはケアの拒否を誘発する可能性がある。その重症度は、エルダースピークの使用量に比例する。

疼痛とエルダースピークは、入院中の認知症患者におけるケアの拒否の修正可能な要因である。

 

エルダースピークは年齢差別的な固定観念から生まれるため、パーソン・センタード・ケアの信条に真っ向から反し、相互作用を非人格化してしまう。病院におけるパーソン・センタード・ケアの理念は、認知症患者が適切な疼痛評価と適切な コミュニケーションを受けられるようにするものである。例えば、入院中の認知症患者の疼痛ケアは、患者要因(例:自己申告が困難、早急な対応が必要な急性の医療ニーズ)、看護要因(例:認知症ケアや疼痛管理に関する知識不足、競合する要求)、環境要因(例:人員不足、刺激の過不足)により、多くの課題に直面している。


エルダースピークは非人間中心的アプローチであるだけでなく、ケアの拒否につながる可能性があることが示された。入院中の認知症患者にパーソンセンタード・コミュニケーションを提供するためには、人格を認識・承認し、嗜好を交渉し、自立を促しながらニーズを促進するアファメーション・コミュニケーションなどの代替アプローチが不可欠である。
また病院の看護スタッフによるエルダースピークを減らすためのコミュニケーショントレーニングの必要性を示している。現在、ナーシングホーム向けの介入として、看護スタッフのエルダースピーク、認知症患者のケアの拒否、施設全体の抗精神病薬投与を減少させるチェンジングトーク(CHAT)がある。看護スタッフにおけるエルダースピークの減少が、入院中の認知症患者におけるRoCの減少につながるかどうかを調べる臨床試験が計画されている。


限界

本研究は大学病院の認知症患者と看護スタッフからなる比較的小規模な便宜的サンプルを用いたが、両者の特徴は、全米の推定値とほぼ同じ傾向であった。今後の研究では、より多様な人々が参加し、それぞれの文化背景におけるエルダースピークの影響を調査すべきである。

 

読後感想

  • ベッド上安静でおむつを付けている認知症患者が「トイレに行かせて下さい」と訴える場面にあったが、スタッフが「そこでしても大丈夫ですよ〜!」という言葉に違和感を持ち、調べてみた。
  • しかし「エルダースピーク」の範囲が思った以上に広い。大げさでも端的すぎてもいけない。フツウの対応が大事なのだろうが、意識しないと難しい。
  • 高齢者はすべからく人生の先輩。リスペクトをもって接しよう」という言葉を改めて噛みしめる(儒教的・封建的と言われるかもしれないが、これが私の中ではしっくり来る)

 

 

読書記録:コンパッション都市 公衆衛生と終末期ケアの融合 序章〜第1章

www.keio-up.co.jp

 

この本を通して明らかにしたいことは?

Q.エンドオブライフケア(人生の終わりのケア)に対するパブリックヘルス(公共の課題としての健康)を組み立てるには?

A.コンパッション都市というモデルの提唱

健康と社会的ウェルビーイングが気にかけられている。

その気遣いは、一人ひとりの経験する死にゆくことdying, 死death, 喪失lossに及んでいる。死の理解はアイデンティティの死や帰属の死を含む。

 

その理由は?

  • パブリックヘルスの現状と問題
    • 産業革命後18−19世紀では、公衆衛生が進み死亡率が低下した。
    • 1970年代:感染症よりも慢性疾患(糖尿病・高血圧等)が徐々に問題となり、個人への健康増進health-promotionが着目されるようになった。
    • しかし時に個人への自己責任論を誘発するため、現在は徐々に「コミュニティに対する健康増進」にも目が向けられ始めている。WHOの提唱する「健康都市」やSocial determinant of health(SDH)が近い概念である。
    • しかし今まで、パブリックヘルスにおいて死や喪失に対する議論はほぼされていなかった。本来はパブリックヘルスでこそ「死」や「喪失」が支えられていたにも関わらず…
  • エンドオブライフケアの現状と問題
    • かつて死や喪失は普遍的なものだった。コミュニティと相互扶助によって支えられていた。
      • ホスピスに端を発した死の専門職化に伴い、公共性は失われ、死の個人化が進んだ。
      • 歴史的な背景・財源の限られた保健サービスの問題から、ンドオブライフケア」≒予後が明確な悪性腫瘍に対する「緩和ケア」になった。
      • 宗教組織が提供していたホスピスが医療化されたことで、全人的ケアは単なる医療の一要素となった。

 

どうすれば実現できる?

過去の研究から明らかになった「死にゆく人のケアの主要なテーマ」

  1. 死にゆく人のケアは、家族とコミュニティにとって平常・日常Normal and routine →非日常となった現代では、公共教育が鍵となるかも?
  2. コミュニティの関係性Community relationships
  3. 全人的ケアWhole person careでなくてはならない
  4. 国の関与Involvement of the state
  5. 予防という発送the idea of prevention
  6. ヘルスケアは保健サービスという発想を超えたものbeyond mere services

 

この本における用語集

  • コンパッション:思いやりのみならず、互恵性+具体的行動
  • パブリックヘルス:公共の課題としての健康。≠公衆衛生
  • ヘルスケア:人と人との間の、健康と病をめぐる「ケア」のすべての包含
  • 病:存在の状態と社会的機能において価値を引き下げられるという変化の諸経験(人類学より)
  • 疾病:近代医学の科学的なパラダイムにおける身体器官・組織の構造・機能に関わる異常(人類学より)

 

ここまでの読後感想

  • パブリックヘルス≠公衆衛生。お上が色々指示するのではなく、住民が少しずつそコミュニティへの健康に責任を持つ、という認識。そしてその健康の中に、「エンドオブライフケア」も包含する。
  • エンドオブライフケア≠緩和ケア。エンドオブライフケアの想定する範囲が思った異常に広い。例えば死や喪失に瀕する「難民」なども例として上げられていた。最終的には程度の差はあれど、われわれ全てに適応される概念なのだろう。
  • この本が書かれたのが約20年前で、日本語訳されたのは最近だが、先見の明がすごい。まだ第1章しか読めていないので、これからも楽しみ。

 

 

 

Parkinson_パーキンソン病患者に対する緩和ケア:医療従事者の経験に関する質的研究

Lennaerts, H.、Steppe, M.、Munneke, M. 他パーキンソン病患者の緩和ケア: 医療専門家の経験に関する定性的研究。 BMC 緩和ケア 18、 53 (2019)。https://doi.org/10.1186/s12904-019-0441-6

 

<なぜこの論文を読んだのか?>

パーキンソン病が進行すると経口パーキンソン病薬が飲めなくなり、パーキンソン病がさらに悪化し、飲めなくなる悪循環が起きる。しかしその有効性は十分に検討されているわけではなく、さらに「いつ乗り越えるか?不安なのか?」に対して倫理的な葛藤も生まれる。

今日も私のチーム内で「本当に胃を入れていいのか?」という医療的・倫理的な面で方針が対立した。

みなはどんな風に悩んでいるんだろう?同じ思いを抱いているんだろうか?と思いながら読んでみました。

www.yodosha.co.jp

www.jsdnnm.com

 

<背景>

パーキンソン病(PD)は、様々な症状を伴う慢性の神経変性疾患である。合併のリスクは疾患の進行とともに増加する。これらの合併症はPD患者のQOLに多く大きな期待がある過去の研究からは、多くの専門職はPDの緩和ケアに必要な能力が足りない経験が浅いと感じており、この分野でのステップ教育望んでいられるである。

本研究の目的は、PD患者に緩和ケアを提供する際の潜在的な障壁と促進について、医療従事者の経験を調査することである。の改善に役立つ新たな側面を追加するために、先行研究をもとに大規模な質的研究を実施しました。

 

<方法:質の記述研究>

データは、医療従事者との10回の個別詳細インタビューと3回のフォーカスグループ(n=29)から収集された。トレーニングを受けている。この団体によりPD患者の90%をSTが、60%をPTがカバーしている)から募集した。メールで「過去2年間にPD患者を治療・死亡支援し、その後した」 「経験のある」医療従事者を対象に質問票を記入してもらい、半構造化インタビューに同意したメンバーの中で、年齢・性別・経験・専門背景などの多様性を考慮し選択的なサンプリングを行ったた(表1.参加者の特徴)半構造化インタビュー・フォーカスグループインタビューを行い、データは主題別テキスト分析によって分析された(表2.研究者の特徴)。3回のインタビュー、2回のフォーカス・グループインタビューを経て新しいコードは出現せず、データの飽和状態に達した。

 

<結果>

分析の結果、PD 患者とその家族の緩和ケアに対する認識された障壁とファシリテーターにする関連 4 つのテーマと 13 のサブテーマが得られた(表 3 “PD 患者に対する緩和ケアに対する認識された障壁とファシリテーターと障壁”表4「インタビューとフォーカスグループのディスカッションからの引用」)

  • 日常診療では、認知機能の低下やコミュニケーション障害といったPD特有の症状が壁となり、患者のニーズをする特定のに苦しんでいた。
  • 家族の意見も場合によって検討しながらだが、緩和ケアを提供するための個人的嗜好にその都度対応することが、重要な促進因子であることが確認された。
  • 専門家は、自分たちの知識不足と複雑なPDを管理する能力の低さを自覚していた。
  • ケアの継続性の欠如、サービスの断片化、時間的プレッシャー、情報の不連続性が認識されていることが示された。

 

Table 1 Characteristics of participants

 

Individual interview (n = 10)

Focus group discussion (n = 29)

Gender

 Women

7

26

Professional background

 Neurologist

1

1

 Elderly care physician

1

2

 Psychologist

1

 PD nurse practitioner

1

6

 Community nurse

1

1

 Physiotherapist

1

10

 Speech therapist

1

3

 Occupational therapist

1

3

 Dietician

1

2

 Othera

2

Age

 25–34

1

2

 35–44

4

4

 45–54

1

11

 55–64

4

11

 65+

1

Highest educational level

 Secondary education

2

 Higher education

5

20

 University

5

7

Setting

 Academic hospital

3

3

 Community hospital

1

3

 Nursing home

1

12

 Private clinic

2

8

 Home care

2

2

 Hospice

 Rehabilitation centre

2

 Primary healthcare centre

1

4

 

Table2.研究者の特徴

コード

イニシャル

年齢

職業と経験

I1

H.L.

35

博士号候補、社会科学修士。PD、看護ケアに関する複数のプロジェクトで5年、PD-患者ケアで14年の経験。

I2

M.S.

29

心理学修士。オランダの全国的なPDネットワークであるParkinsonNetのコーディネーターとして5年間勤務。

I3

M.G.

51

上級研究員、助教授、緩和ケア博士、緩和ケアにおける研究プロジェクト経験18年以上、質的研究上級講師、看護師(NP)

I4

M.M.

50

ヘルスケア・イノベーション准教授、戦略運動障害専門家センター長、ParkinsonNet代表取締役

 

Table3. PD患者に関する緩和ケアの促進因子と障壁の認識

テーマ

障壁

促進因子

1.PD患者と家族介護者のニーズへの対応

  • 認知障害やコミュニケーションの問題
  • 本人のニーズと家族介護者のニーズとの対立
  • 家族介護者との交流時間の不足
    • (PDはがんに比べて予後を予想しにくい)

本人、家族、医療従事者と希望やニーズについて早期に話し合う

2.疾病管理

  • 緩和ケア導入における明確な責任と役割の欠如
    • いつ緩和ケアに紹介するかの確信が持てない
    • 神経内科-Pt間は薬物での長期安定を目的
  • 介入エビデンスの欠如、リソース・時間不足、忙しい
    • 薬物療法の難易度↑、ADL、姿勢、褥瘡予防支援
    • 胃瘻は延命か?QOL改善か?

適切な疾病管理を提供するためのより多くのエビデンスとガイダンス

3.専門家によるトレーニングの必要性

  • どのような緩和ケアを提供すればいいか、どのような技能が必要かわからない(特に精神的・スピリチュアルケアの領域)

レーニングは自信につながる

コミュニケーション能力の高さ(特にオープンかつ繊細な態度)

長年の濃密な医師患者関係

4.サービス間の連携

  • 医療従事者間の限られたコミュニケーション

専門的な緩和ケア・サービスの利用可能性

ケアコーディネーション;緩和ケアをコーディネートする中心人物の必要性

 

Table4. インタビュー・フォーカス・グループ・ディスカッションからの引用

引用番号

 

テーマ:PD患者とその家族介護者のニーズへの対応

このPDの女性は、私たちが将来の選択をしなければならない段階にいる。彼女が何を望んでいるのか、人生の終わりをどう考えているのか…今、彼女の認知機能は低下しています.....このような会話は、この女性の認知レベルがもっと良いときに、もっと早い段階で導入されるべきではなかったのでしょうか?(個人面接、ナース・プラクティショナー

PDが進行すると、多くの人が意思疎通ができなくなる。彼らは自分の人生を生きることができますが、私たちは、彼らが何を望んでいるのか、彼らにとって何が重要なのかを、その瞬間に伝えることができないのです。(フォーカスグループディスカッション)

 

人々は希望のようなものに集中し続けるだろう。もしかしたら、自分たちを助けてくれるチャンスがまだあるかもしれない。挑戦し、新たな希望を持つが、失望することも多い。(フォーカス・グループ・インタビュー、作業療法士

予後について話すのはもっと早いほうがいい。老人ホームに入れば、病状が安定すると思われがちです。しかしPDは続くので、悪くなる前にシナリオを話し合う必要があります。(フォーカス・グループ・ディスカッション、高齢者ケア医)

 

私が本当につらいと思うのは、家族の介護者が負担をかけすぎて、患者を一日中車椅子に乗せてしまうことです。ある介護者が言った:「少なくとも邪魔にはならないし、転ぶこともない。夫が動かない方が私は楽です。でも、精神的な負担は大きいです。(フォーカス・グループ・ディスカッション、作業療法士

ある患者が病気になったとき、パートナーは入院を勧めた。本人が望んだことでも、本人にとって最善のことでもなかったと思います。でも、このパートナーは、何かをしたかったのです…(フォーカス・グループ・ディスカッション、理学療法士)」。

テーマ:疾病管理

PDと診断されたら、あなたは実際、病気と闘うことになる。専門医と長年にわたって協力関係を築き、より良い生活の質を保つため、あるいは安定した状態を維持するために闘うのです。専門医にとって、これ以上あなたのために何もできない、この闘いをやめなければならない、と言うのはとてもつらいことです。このことを患者に伝えるのは大変なことです。(個別インタビュー、高齢者医療医師)

患者さんが人生の最後の1ヶ月だと言うと、治療よりも慰めに重点を置いた、異なる介入が行われると思います。私たち(専門家)はそのことを感じ、考えてはいるのですが、はっきりとは言わないのです。(フォーカス・グループ・ディスカッション)

 

薬の量を増やすことによって、あらゆる種類の副作用が起こる可能性がある。例えば、クロザピン治療ではめまいや平衡感覚障害のリスクが高い。長所と短所のバランスをとるのは非常に難しい。(フォーカス・グループ・ディスカッション、高齢医師)

パーキンソン病の薬はそろそろだ。薬物療法が有効かどうか判断するのは難しい。薬の量を増やすか、当面の副作用を減らすために薬の量を減らすべきか。当面、投薬のバランスを改善する(フォーカスグループディスカッション、高齢者ケア医)

テーマ:プロフェッショナルのトレーニングの必要性

私は患者に緩和という言葉を口にすることはない。それは私の仕事ではありません。(個別インタビュー、作業療法士

難しい問題について話すことに慣れなくても大丈夫。しかし、そうするためには自分自身を慎重にする必要があり、そうすればテロ楽になります。

 

医師は患者とスピリチュアリティについて深く話すことはないと思います。 医療はもちろん本業であり、スピリチュアルなことは話題にならないことが多いからです。 (個別インタビュー、神経科医)

 

確かに、短い時間しか患者を診ないのであれば、死について話すことはない。のことを考えたことがあるかどうか、私は探ります。(個別インタビュー、理学療法士

看護師、理学療法士、清掃員など、その人を数年前から知っている人であることもある。

テーマ:サービス間連携

私はこの地域の緩和ケアチームのメンバーでもあります。PD患者を紹介する数は憂鬱なほど少ない。多くの症例があるのになぜ私たちに相談しないのでしょうか?(個別インタビュー、高齢者ケア医)

 

私がよく思い出すのは、例えばケアコーディネーターによるより良いコーディネーションが必要だということです。 特に、患者が病院、リハビリセンター、自宅を転々としている場合です。治療が変更されることもあります。人々は、解決されたのか知っているとは限らない(フォーカス・グループ・ディスカッション)

 

<強みと限界>

強み

  1. 複数の質的方法(個別面接とタッチ・グループ討論)と調査の三角測量(複数人によるデータ補足)を置くことで、我々のアプローチの評価性を確保した。
  2. 本研究の特に優れた点は、複数の環境から幅広い医療専門家の経験を目録変更したことである。これにより、PDの緩和ケアに関する概略を収集できた。

限界

  1. 緩和ケアの経験がない、または短い医療専門職は含まれませんでした。参加した医療専門職は、過去2年間に死亡したPD患者と最近の経験があるため、優れた緩和ケアシステムを持つことにそのため、これらの知見は経験の浅い医療専門家の意見を反映したものではない。
  2. 私たちのデータは医療従事者の実践報告であり、医療従事者の知識や経験を定量的に測定してはいません。
  3. 我々の知見はオランダの状況を表したものであり、より広い国際的な状況に一般化できない可能性がある。
  4. これらの限界はなく、本研究で得られた知見は、PD患者に対する緩和ケアの質を向上させる方法を示している。

 

<今後の展望・臨床との関連>

  1. PD患者のニーズを早期に把握し、好みについて話すことは、PDケアの一部となるべきである。
  2. さらに、医療従事者の緩和ケアに関する知識を高めるための教育戦略が必要である。適切な戦略には、ワークショップ、文書資料、オンライン学習モジュールなどがある。患者・家族の情報ソースを作成しました(オランダ語のみhttps://www.youtube.com/watch?v=8W02j6fzd3g)。これらのサービスとの連携は、バイケースでの学習に使えます。は正しい専門家サービスに紹介されるまで、症状コントロールに大きな遅れを経験する可能性があるため、臨床能力差はケアに向かう可能性がある。専門家の能力を高めるための対策を実施すべきである。
  3. 進行した病期におけるPD患者自身の経験について、より深い洞察を得ることが重要であることは明らかである[54]。を探すことは非常に困難である。

 

<読後感想>

  • 解決にはならないが、みなも似たような思いを抱えていると思いました。
  • パーキンソン病は外来から症状・ACPについて丁寧に必要性を感じたので、外来や増悪時にACPの話に触れたりする必要性も感じました。病気経過軌跡やACPについてのよい資料があればいいのですが)

www.osaka-pda.com

DM_高品質の糖尿病ケアを提供している10診療所で大事にしている戦略:質的研究

Peterson KA, Solberg LI, Carlin CS, Fu HN, Jacobsen R, Eder M. Successful Change Management Strategies for Improving Diabetes Care Delivery Among High-Performing Practices. The Annals of Family Medicine. 2023 Sep 1;21(5):424–31.

www.annfammed.org

 

総診=変化をもたらす医師」、という言葉から着想を得て読んでみました。

 

まとめ:高品質の糖尿病ケアを提供している10診療所で大事にしている戦略

  • チェンジマネジメント戦略
    1. ケアプロセスの標準化(10/10)
    2. 従業員のパフォーマンスへの意識(9/10)
    3. ケアチーム形成(9/10)
    4. 病院との連携(8/10)
    5. 集団ベースの報告(8/10)
    6. エンゲージメント(7/10)
    7. 説明責任(7/10)
    8. リーダーシップ(5/10)
    9. 質向上活動(5/10)
  • ケアマネジメント戦略 
    1. 積極的なアウトリーチ(10/10)
    2. 患者との関係強化(8/10)
    3. 来院前計画(6/10)
  • 障壁
    • スタッフ不足(4/10)
    • 経済的・社会的障壁を抱える患者への質の高いケア(3/10)

 

 

背景・リサーチクエスチョン

糖尿病治療提供の改善を実施する際に、業績の高いプライマリケア診療所はどのように変化を管理しているか?

 

糖尿病に対して忙しいプライマリ・ケアの現場がどのように上手く対処しているかはそこまで明確ではない。ケア提供の概念モデルでは、多くの場合、基本原則を特定し、それらの原理に基づいたテーマ別・戦略的のアプローチを行う。しかし多忙な診療環境に新しいプロセスを導入することは、しばしば混乱を招く可能性がある。

糖尿病ケア提供の改善は、プライマリ・ケアにおける質改善活動の一般的な焦点である。慢性疾患管理のモデルとして、糖尿病ケア提供の成功戦略は、プライマリ・ケアの場で様々な慢性疾患にわたって効果的なケアマネジメントプロセス(CMP)を実施するための最善の方法について参考にすることができる。糖尿病診療実績の定量的改善は、複数のCMPと関連している。われわれは以前、高業績の診療所が用いるCMPは、低業績の診療所が用いるCMPとは異なることを報告した。CMPを効果的に採用し、要求の厳しいケア環境における潜在的に破壊するような変化を管理する能力も、高業績と低業績の差別化要因の1つかもしれない。7年間にわたるUnderstanding Infrastructure Transformation Effects on Diabetes(UNITED)研究では、ミネソタ大学プライマリ・ケア・エクセレンスセンターとヘルスパートナーズ研究所(HealthPartners Institute)の経験豊富な研究者の努力により、ミネソタ州とその周辺地域全体でプライマリ糖尿病ケアを最も効果的に改善するCMPが特定された。

 

方法

デザイン:質的インタビュー(半構造化)

研究方法:診療所の選択:医師診療連携準備調査(PPC-RS)に参加している診療所を対象に、2017年にミネソタ州全体の質報告・測定システムに報告した全プライマリケア診療所585施設と、2019年に報告した診療所626施設からCMPの有無を調査した。回答率は、2017年は71%、2019年は72%であった。回答者と非回答者は、地方と医療システムの規模において同等であった。合計477の診療所が、2017年または2019年のいずれかにPPC-RS調査を完了した。本研究では、PPC-RS調査を完了し、2017年と2019年の両方で糖尿病の年次実績データを提出した330診療所からインタビュー対象の診療所を選択した。18~75歳の糖尿病患者を年間30人以上診察しているミネソタ州の診療所では、実績データの提出が義務付けられている。

患者が血糖コントロールと血圧コントロールを同時に達成し、スタチンと抗血小板薬をガイドラインに基づいて使用し、非喫煙者であれば、最適な治療を受けたとみなされる。

2017年と2019年の両方でOptimal Diabetes Care (ODC:最適糖尿病ケア)実績の上位4分の1の診療所を特定し、ODCスコアの年間改善率で診療所をランク付けし、改善を続けている診療所を捕捉した。最も成績の良い診療所から順に、診療所のリーダーに電話と電子メールで連絡し、その診療所を選んだ理由を説明した。PPC-RS調査票を記入した個人を特定し、調査担当者との20分間の訪問インタビューに参加するよう、診療所に要請した。

 

インタビュー

  1. ODCスコアの向上に最も貢献したのはどのような変化だと思いますか?
    1.  (ODCスコアの向上に最も貢献したのはどのような変化だと思いますか?例えば、患者への注意喚起やアウトリーチを実施したクリニックもある。
    2. (貢献したと思われるものをすべて挙げるまで質問を続ける)。他に付け加えたいことはありますか?
  2. そのような変更をどのように実行しましたか?何か特別な戦略を用いましたか?
    1. その変化を可能にした人事や資源の変化はありましたか?
    2. 変化を可能にしたのは、あなたの診療所や、より大きな医療グループとの関係のどのような点ですか?
  3. 改善に貢献した他の要因はありましたか?

インタビューは、外部の専門家によるテープ起こしサービスによって書き起こされ、従来の内容分析を用いて定性的に評価された。各診療所では、書き起こしの見直しは行われなかった。コメントはテキストデータから直接抽出した。

研究者5名全員による最初の2回のインタビューのレビューと討議を経て、指示内容分析として最初のコーディングの枠組みを構築した。フレームワークと各コンセプトのコードは、各インタビューについて話し合う中で、コンセンサスによって修正された。

すべてのインタビューにおいて、コンセプトコードを明確にし、標準化するために、個人レビューとグループディスカッションを併用した。その後のレビューでコーディングに変更が生じた場合は、以前のインタビューを再確認し、変更を反映させるために再コーディングを行った。続いて、(1)ケアのプロセス(何が実施されているか)、(2)変化を管理するための戦略(どのようにプロセスが実施されているか)、(3)ケア提供の障害、の3つのカテゴリーに分類した。データの飽和は、9回目または10回目の面談で追加の戦略が特定されなかった時点で起こったと判断した。その後、頻度カウントと観察を定比較アプローチで組み合わせ、テーマの総括的分析を行った。

 

結果

トップ 13 の診療所のうち 10 施設がインタビューに同意した。

UNITED 研究に参加した 330 の実践の平均 ODC パフォーマンスは、2019 年に 48.4% だった。

本研究でインタビューした 10 件の高パフォーマンス実践の平均 ODC パフォーマンスは 56%だった。

選択された診療所は、2017 年から 2019 年にかけて、ODC パフォーマンスを年間平均 2.9%ポイント(1.6 ~ 4.0 %ポイント)上昇させた。これはインタビュー時点で動的に積極的な改善が継続していることを示している。

Table 1.

Performance Characteristics of Selected Practices

Clinic Health Care System Size (>12 Practices) Average Annual Increase in ODC, % Average Annual Increase in ODC ODC Measure in 2019 Total Diabetes Population in 2019
A No 3.1 0.062 0.579 302
B Yes 4.0 0.079 0.553 215
C Yes 2.3 0.045 0.571 631
D No 3.2 0.064 0.516 273
E Yes 2.5 0.050 0.660 259
F Yes 0.3 0.007 0.529 1,432
G Yes 1.6 0.032 0.530 1,250
H Yes 2.2 0.044 0.517 286
I Yes 2.2 0.044 0.593 351
J Yes 3.8 0.076 0.585 1,129

10回のインタビューを通じて、199の重要なコメントがあった。コメントを分析した結果、48の明確な概念が特定された。

解釈分析を用いて、この概念を6つのケアマネジメントテーマ、37の戦略的アプローチ、4つの障害に分類した。5人の研究者は、戦略的アプローチを13のチェンジマネジメント戦略に分類した。とくに多くの診療所が実践している9つの戦略を解説する。

 

 

チェンジマネジメント戦略

Change Management Strategy Practice                   No. of Comments No. of Clinics
  A B C D E F G H I J    
Clinician and staff engagement   2 2     4 6 1 4 4 23 7
Accountability 5 4     1   2 2 2 1 17 7
Performance awareness 1 2   1 2 3 1 1 1 4 16 9
Staff education   3   1         2 1 7 4
Reminders   1   1   1         3 3
Effective care teams   1 6 2 4 2 1 2 2 2 22 9
Engaged leadership 2 2       1     3 1 9 5
Quality-improvement activities 1 1         5   1 1 9 5
Standardization as a QI strategy 9 3 5 3 2 4 5 4 1 4 40 10
Documentation   1   1         1   3 3
Patient expectations 1 1       1       1 4 4
Health care organization support 3 1   2 1 1 4 3 3   18 8
Population-based reporting 1 2   1 1 3   1 1 3 13 8

QI = quality improvement.

1. ケアプロセスの標準化

標準化、標準化の個別化、優先順位の明確化、シンプルに保つ、一貫したメッセージの提供といった記述を使って、どの診療所も質改善活動の中でチェンジマネジメントの原則を確認した。糖尿病ケアの標準プロセスを開発することで、糖尿病ケアマネジメントの複雑さが単純化された。ケアチームの説明責任を果たすために、役割と責任を標準化することが重要であると考える診療リーダーもいた。また、標準化された業務は、代わりのスタッフへの期待を明確にすることで、スタッフの欠勤をカバーすることを簡素化した。

2. パフォーマンス意識

10診療所のうち9診療所が、診療所スタッフ全体で定期的に育まれる業績意識と品質へのコミットメントの重要性を指摘している。採用や入職のプロセスから始まり、スタッフ・ミーティングの一環として、リーダーは業績評価指標に反映されるような質の高いケアを提供することの重要性を強調した。一部の診療所では、医療者間や他の診療所との競争意識を高めていた。いくつかの診療所では、好成績を収めたチームを表彰したり、表彰されたりして、好成績や成績の向上を祝っていた。

3. ケアチーム

10診療所のうち9診療所が、糖尿病のパフォーマンス向上の鍵として、ケアチームメンバーの役割拡大やチーム規模の拡大を報告した。チームの拡大により、患者へのアウトリーチや患者との関係強化のためのサポートが強化された。3つの診療所では、臨床医と医療助手のペアでケアチームを構成していたが、6つの診療所では、それらの役割を超えてケアチームを拡大したと説明した。ケアチームの相互作用を改善するために、物理的なスペースを変更した診療所もあった。

4. 医療機関からの支援

医療機関(HCO)との連携は、業績向上に寄与する重要なものとして、8つの診療所で確認された。このようなサポートがないとした2つの診療所は、2つの異なる大規模HCOに所属していた。診療所は、追加の情報や専門知識を得るためにHCOを利用していた。支援内容としては、患者登録の改善、質向上会議の拡大、専門家の意見へのアクセス改善、ワークフローの標準化支援、スタッフトレーニングの強化などが挙げられた。

5. 集団ベースの報告

8つの診療所が、糖尿病診療を改善するために報告システムを改善することの重要性を指摘した。6施設が信頼できる最新の報告書の必要性を指摘し、5施設が報告書の作成に積極的に取り組む時間の必要性を指摘した。報告書は使いやすく、アウトリーチや受診前ケアをサポートする実用的な情報に重点を置く必要があった。ある診療所では、レポートの評価のみを担当するアシスタントを雇った(3つの診療所で分担)。

6. エンゲージメント

7つの診療所では臨床医の関与が、5つの診療所ではスタッフの改善プロセスへの関与が、成功のために重要であるとした。診療所では、競争や成功の祝賀を含む複数の方法で、臨床医とスタッフの参加を促した。指導者は、臨床転帰の改善に関する共通の目標を強調することで、臨床医とスタッフの参画を促した。

7. 説明責任

7つの診療所では、プロセス完了に対するスタッフの説明責任を管理することが重要であるとした。5つの診療所では、スタッフにプロセスの目標達成を求めた。4つの診療所では、スタッフのプロセス遂行状況をモニターしていた。説明責任のあるプロセスには、登録報告書の評価、臨床成績スコアのモニタリング、患者の行動変容が長期にわたって持続しているかどうかのチェックなどがあった。

8. リーダーシップ

5つの診療所では、地域および/または組織のリーダーシップまたは糖尿病チャンピオンが重要であるとした。リーダーシップは、臨床医とスタッフの関与を高め、優先順位を設定し、認識と説明責任を促進する上で重要な役割を果たすことが指摘された。

9. 質向上活動

5 つの診療所では、変革プロセスの管理に責任を持つ組織体制が確認された。3 つの診療所では、変化を追跡するために質向上会議に依存していたが、他 の診療所ではハドルや小規模チームを用いていた。

 

 

ケアマネジメントのテーマ

Table 3.

Care Management Theme Practice                   No. of Key Quotes No. of Clinics
  A B C D E F G H I J    
Proactive approach to care 2 2 4 1 4 4 2 1 2 3 25 10
Patient relationship/interaction 1 3 8 3   3 3 3   3 27 8
Previsit planning       2 2 2 3   1 3 13 6
Patient education     2 1           1 4 3
Intensifying activities 1                   1 1
Priority       1             1 1

1. 積極的なアウトリーチ

積極的なアウトリーチとは、糖尿病診療の受診以外でケアを開始するあらゆるアプローチと定義された。積極的なケアは、10/10の高業績診療所が糖尿病ケア提供の改善にとって重要であると認識した。他のどのCMPよりも頻繁に言及され、各インタビューで平均2~3回コメントされた。積極的なアウトリーチには、検査、薬の変更、予約が必要な患者と積極的に連絡を取ることが含まれる。ほとんどの診療所(8/10)では、糖尿病登録レポートを評価し、いつ手を差し伸べ、ケアの必要性や現在の目標の不足を患者に知らせるべきかを特定していると報告した。アウトリーチには、目標とする糖尿病パフォーマンス目標に達していない個々の患者への電話、郵便、電子メール、ウェブポータルのメッセージによる連絡が含まれた。

2. 患者との関係強化

8つの診療所では、主に電話、手紙、電子的コミュニケーションによる患者との交流の頻度と質を高めることにより、患者との関係を強化することに重点を置いていた。診療所と患者との関係は、特に臨床医(2/8)、ケアチーム(4/8)、または臨床医とケアチームの両方(2/8)であった。患者とのより良い関係は、行動変容勧告の遵守を促進するために必要な患者の信頼を確立するために不可欠であると認識されていた。患者との長年の関係は、糖尿病のパフォーマンス指標を向上させるために特に重要であると考えられた。

3. 来院前計画

6つの診療所では、診察前計画が重要であるとされた。プロアクティブケアの一形態である来院前計画は、必要な糖尿病ケアに対処する機会として次回の予約を利用する計画であると定義された。来院前計画は通常、別の理由で患者が来院した際に、糖尿病ケアの必要性に確実に対処できるよう、医師またはスタッフが注意を喚起することを含んでいた。

 

 

業績向上の障壁

これらの高業績診療所では、障壁が特定されることはまれであった。4つ以上の診療所から単一の障壁が指摘されたことはなかった。特定された障壁を表4に示す。

4つの診療所では、スタッフおよび臨床医の離職が、患者との関係を希薄にし、ケアチームの経験やトレーニングを損なうことによる障壁であるとした。その結果、アウトリーチを提供し、行動変容の動機づけを行う診療所の能力が最終的に低下した。

3つの診療所では、経済的・社会的障壁を抱える患者に質の高いケアを提供することが課題であることを明らかにした。これらの診療所では、地域資源を統合することの価値を認めていたが、社会的または経済的ニーズを体系的に特定し、地域資源を統合するための優れたシステムを持っていると報告した診療所はなかった。

Table 4.

Code Label Practice                   No. of Key Quotes No. of Clinics
  A B C D E F G H I J    
Health care organization         1       1   2 2
Social determinants of health   1 1             1 3 3
Community resources     1         2     3 2
Turnover   1   1 1   1       4 4

 

考察

この質的研究から、業績の高いプライマリ・ケア診療所では、糖尿病の業績改善活動を成功させるために重要な変更管理戦略について、同様の認識を共有していることが示された。選ばれたすべての診療所は、優れた業績を共有していた。一度も一緒に仕事をしたことがないにもかかわらず、9つの変更管理戦略が、診療の変更を成功させるために重要であるとして、半数以上の診療所で独自に確認された。同じ戦略が共通して確認されたものの、9つの戦略すべてを確認した診療所はなかった。

実践の中核となる要素にばらつきがあることが、実施方法の違いにつながっていることが予想される。リソース、組織構造、機能的プロセス、および適応的予備力に関する中核的実践に対処するチェンジマネジメント戦略は、実践改善イニシアチブの採用を促進するためのもっとも妥当な道筋を提供する。これらのプラクティスによって特定された戦略は、改善への特定のアプローチから開発されたものではないため、糖尿病の改善以外にも広く適用できる可能性のあるチェンジマネジメントのアプローチを示唆している。

特定されたマネジメントチェンジ戦略は、達成すべき目標ではなく、単純な測定基準を設定するのに適しているわけでもない。しかし、これらの戦略を組み合わせることで、成功した診療所がパフォーマンス改善中にどのように変更を管理するかについての視点が得られる。これらの観点を検討することは、診療所の改善活動における変化管理に対する自らのアプローチの長所と短所を特定するのに役立つかもしれない。質改善のイニシアチブは、パフォーマンス改善を成功させるために重要であると一般的に考えられている変更管理戦略のさらなる評価を検討するかもしれない。

 

限界

  • 高業績の診療所ではチェンジマネジメント戦略が重要であると報告されているが、特定された戦略が特定の診療所において必要であるか十分であるかは、分析では扱われていない。
  • すべての診療所がプロアクティブケアを増やしたいと考えており、解釈はこの目標を持つ診療所に限定すべきである。
  • サンプルは地理的にミネソタ州内の診療所に限定されたが、ミネソタ州内ではパフォーマンスにかなりのばらつきがある。しかしミネソタ州の診療所は、全州で採用されているのと同じ医療提供モデルを使用している。また診療実績は人種、民族、所得で統計的にコントロールされているため、分析中にこれらの既知の障壁が特定される可能性は低い。業績の高い診療所のみが選択されたため、業績に影響を及ぼすケア提供の一般的な障壁が特定される可能性は低かった。

 

読後感想

  • 指標にはならないが一定の参考にはなるなと思った。これらはOutcomeだから、あとはこれにどう近づけるか、実践の部分はまた別物なのかなと思う。
  • すくなくとも医師だけでは困難。
  • もしかしたら第三者が入ることで医師や診療所へのフィードバックに入る仕組みが入ってほしい。その際、外部が入ることに寄る抵抗感を下げる、文化づくりが必要なのかもしれない。

Healing_癒しの意味: 苦しみを超える _質的研究

エグニューTR.癒しの意味:知覚を超越すること。

www.annfammed.org

 

<リサーチエスチョン>

医師と患者の治癒Healingの関係がどのように発展し維持されるのか特定するモデルを作成する

 

<背景>

その背景:他の分野(人類学、心理療法、看護師のケア領域など)では癒やしヒーリングの重要性が示されている。の研究は医学文献には検討がありません。

また治癒関係の為の理論モデルの考えは、専門家または患者とのインタビューに基づいているが、患者と医師の両方に行ったものはない。

 

<デザイン>

質的研究(インタビュー)

 

<調査方法>

(サンプリング戦略)

治癒関係の構築と維持において模範となると考えられる医師は、出版物、評価、受賞歴の評価に基づいて意図的に選ばれた。

治癒の定義は、参加者の経験から定義が明らかになるように、意図的に未定義のままである。 情報が提供され、改善された。インタビューは、分析チームが満足状態に達したと判断するするまで続けられた。

 

(半構造化インタビュー)

・※事前に第一著者は、臨床医および治療者としての彼の経験に対する彼自身と分析チームの認識を高めるために、元患者 5 人にインタビューした(臨床医および治療者としての彼の経験に対して)彼自身と分析チーム的なものを高めるため。また治癒について議論、分析し、個人的な確信をより深く認識できるようにするため)

→医師の考えは記録ジャーナルのフォーマットに沿って行われ、各面接後に内省的なフィールドノートが口述筆記された。

さらに、分析チームは各インタビューを、特にインタビューで批判し、初期観や医師中心の判断を悪くする面接官の質問やアプローチを指摘した。

インフォームド・コンセントを得た後、筆頭著者は、半構造化面接ガイドその後、各医師と患者に個別に対面で詳細な面接を実施した。質問が含まれています。

・追加の質問で、患者との継続的な関係の中で、治療者としての医師の役割や、人間関係が治癒過程に及ぼす影響について検討した。インタビューは1〜2時間続いた。

→インタビューは録音され、文字起こしされ、定性分析ソフトウェア Atlas ti にインポートされました。

 

<結果>

コンポーネントモデルとその概念像を示します。

医師(N=6):

患者(N=23):正しくは慢性疾患、苦痛歴、薬物乱用歴、乳がん歴のある患者が選ばれた

 

プライマリ・ケアでDrとPtに癒しの関係を結ぶ、各要素の関係性

(1)批判のない感情的な絆を大切にし、

(2)患者にとって最も利益をもたらす方法で臨床医の評価・管理

(3)時間をかけて患者をケアするという約束を遵守・表明する

→ここ、信頼・希望・知られている状況を耐える(≒癒しの関係)

 

それを支える医師のコンピテンシーとして自信、感情のマネジメント、マインドフルネス、知識がある

癒し癒やしの関係モデル

 

モデルコンポーネント 定義 発語の一部
     
価値    
非判断的な姿勢 すべての患者を価値ある人間として受け入れる Pt「…彼女の前を歩く人は皆同じです。…彼女は、あなたがどのような保険に加入しているか、肌の色が何であるか、体がどれだけ大きいか、どれだけ小さいかなど気にしません。」
繋がっている それぞれの患者と個人的に共鳴・共感できる場所を見つける 博士「私は特に最初は嫌いだった人たちを愛するようにします。私がそれでも良くなってほしいと思うには、何か理由があるはずです。」
患者「そうですね、あなたはただの患者123番か何かではないように感じます。つまり、それは人間用の薬なのです…」 なんと、あなたを心と体が一緒になった全体的な人間として見るのは素晴らしいことです。」    
存在    
・面談時に細心の注意    
・体験の受付    
・共感 共感 患者と接するときは存在すること  
・患者さんの話を積極的に聞く    
・患者の病気に関する主観的な経験の重要性を認識する    
・患者の経験の経験と治療者の人生経験を結ぶ Pt「…あなたと一緒にいるとき、彼女は完全にあなたに指示されて、集中しています。…今はあなたの時間です。」  
患者「彼はそこに座って話を聞いていました。あなたを閲覧室から追い出すことは一時ありませんでした。必要なだけ時間がかかりました。」    
能力への感謝    
アライアンスパートナーシップ 診断と治療に関する意思決定において、パートナーとして患者に関わる Pt「「私が(医師に)本当に感謝していることの一つは、私達のパートナーシップみたいだということです。」
教育 医療用語の説明と患者さんの自己管理指導 Pt「「医師は私が今後何をしなければならないのか、ついでに必要な生活の変化を説明していただきました。薬や食生活など、再発を防ぐためのあらゆる方法を知っています。」
押す 患者の利益のために治癒者の力を活用する Pt「…だから私には、誰かが私を押してくれて、あなたがそれらのことを言わなければ教えてくれる必要があるのです。それが私がまだここにいる理由の一つです。」
患者「…時々コーチ、時々上司、時々兄弟、そして時々医師。」    
永続性    
対人関係の継続性    
対人関係の継続性 ほとんどの場合、患者は一時的に同じ治療者に診てもらえることができる Pt「何年も何年も経つと、それはまるで…結婚のようです。あなたとあなたの医師は結婚しています。」
重大な健康上の危機 重要な健康上の出来事の際の患者のケア 博士「誕生や死、あるいは何かの病気のことなど、大きな出来事の時にそこにいるということもある、そこにいる必要がある時々そこにいるということもあり、より本質的な形そこにいるために他のことを押してそこにいるということもあります。」
思いやりのある行動 治療者が気になるを患者に知らせる行動の積み重ね Dr「ほとんどの医師が他の人にやらせているようなことを、私もやっているんです。足の爪を切ります。耳を洗浄します。皮から小さな皮を取り除きます。血を抜きます」 。」
諦めない 科学が提供できるもの何も残っていない場合でも、患者の苦痛を軽減しようとできる Pt「でも彼は一時的に私を諦めなかった。それは大きな意味を持っています」
ヒーラーの能力ヒーラーのコンピテンシー    
自信 ヒーラーの治癒能力に対する自信の投影 Pt「彼女にはある程度の自信があったと思います。そして彼女は患者に対して自信を出させました。」
感情的な自己管理 感情を正しく認識し、管理する Dr「冷静さを重視、これで大丈夫だという態度を維持したことで、その子は数え切れないほど緊急外来を訪れ、不必要な検査や治療を必要なくして済んだと思います」
マインドフルネス 内と外の環境の、一瞬を認識する能力  
知識 診断や治療に関する情報の保管 Pt「…それはただあなたのスキル、あなたの知識です。私はクラックポットに行くつもりはありません。」
Pt「何かが分からないときは、それを認めようと思います。あなたは人間です」    
関係的な結果関係的な結果    
信頼Trust 弱い立場であっても続ける気持ち、大切にされていると感じること、約束は必ず守ること 博士「時間をかけてかなり上がる信頼とは言葉です。それはすぐにはできないことです。それを少し形で築かないといけません」
患者「…彼は『大丈夫、私は間違いを犯しました』と勇気を持っていました。私にとって彼を永遠に愛し続ける結果となりました」    
希望希望 現在の考えを超えた前向きな未来が可能であるという信念 Pt「医師によっては、暗い顔をして、悲観的になりがちだと思います。(悪いニュースに対して)同じことを2通りの覚悟ができると思います」誰にも私に何かを控えようとしてほしくないのです」
Pt「でも、希望とは、新しい薬があるという小さな光だと思います」    
Pt「薬を飲まなくても、彼は気分を良くしてくれます。彼に会った後は気分が良くなるろうという感覚だけがあなたにはあります。」    
知られること知られること 医師が患者を人間として理解しているという集中された感覚 Pt「…彼女はまず私が誰であるかを知っています。彼女は私が誰であるかを正確に知っています。彼女は私の考えや物事の理解の仕方を知っています。」

 

 

 

<考察>

  • インタビューでは、患者と臨床医の両方が治癒の性質について共通の見解を持っていることがわかった。こと、病気、そしてその経験を超えた意味を見出すことを意味する。
  • 本研究では患者治療者癒しの場を見つけることが出来ず、場所はなく、しかし哲学者のウィリアム・デズモンドが「また」と呼んだのだ、人のつながりによってそれなりにされる空間にあった。
  • 他の医療者と患者の関係の属性は、臨床医と患者の関係の属性と非常に似ていることが認められた。ある。

 

Q.最新の証拠重視の医療の世界において、治癒関係はなんの役に立つのか?

  1. 今日のデータは、癒しの関係が患者の生活の質を向上させることを示唆している。希望、信頼、そして知られることは、治癒関係の成果であり、患者・医師に取って重要である。
  2. 人間関係、特に医師患者関係の特定の側面が、罹患率・死亡率・治療アドヒアランス・健康状態、糖尿病などの臨床転機に関連している証拠がある。
  3. この研究に参加した臨床医たちは、 15〜30年間、非常に困難な環境で臨床現場に駆けつけており、今でもその仕事を大いに楽しんでいます彼らの経験は、最近の文献に存在しているプラ​​イマリ・ケア医の士気の低いさと燃え尽き症候群とは対照的である。

Q.私たちは今回は特殊な臨床医を研究したため、これらの結果は平均的な臨床医にはほとんど関連性がないと主張する人もいるのでは?

今回参加した臨床医は、他のほとんどのプライマリケア臨床医と同様の中断、時間的プレッシャー、患者数の要件、事務処理の負担の下で働いています。

 

Q.すべての臨床医には特別なつながりを持つ患者がおり、研究に参加した患者は臨床医の患者全員を代表しているわけではないのですか?

必ず予防治療や急性疾患のために医者を訪れるほとんどの患者は、その時点では治癒関係の必要性を感じていないが、遅かれ早かれ病気と考えが起きだろう。いるかどうかは確信が無いが、臨床医のインタビューによると、困難を抱えているすべての患者と治癒関係を築く試みが行われていることが示唆されている。

 

Q. 今回説明した医師患者の親密な関係は、ウィリアム・オスラーが平静の心(Aequanimitas)と呼び、心の診断と治療に必要な淡々とした関心には関心があるので参加しますか?

本研究はこの不快に対する体系的な答えを提供するように設計されたものではないが、臨床医や患者へのインタビューの内容には、患者が標準以下の医療を受けていたことを示唆する証拠さらに、私たちが説明したような関係を構築することが、より正確な診断とより良い治療につながる可能性があるという意見はいくつかあります

 

最後に、癒しの関係は医師と患者の双方に意味、喜び、満足感を与えている。医師の燃え尽きや患者の医療に対する不満の問題の解決は、システムの改善や診療報酬の変更だけでなく、癒しの関係を育むこともあることを示唆している。

 

 

<研究の限界>

  • 本研究の臨床家と患者は、模範として意図的に選ばれたものであり、一般的な優先マリ・ケアの臨床家と患者の関係を代表するものではない。努力すべき目標を示すものはないかもしれない。
  • 臨床医と患者の治癒関係のあり方は、患者と臨床医双方の影響、民族、民族活動される可能性がある。そのサンプルは、最も多くの研究現象が存在する確率を最大にするために選ばれるされるものであり、性、競争、民族の影響について一般化するために最も多くの知識を広めることはできない。現在、このモデルに基づいて調査票を作成中であり、一般化の可能性の問題に対処できるだろう。
  • インタビュー・データには、不思議な洞察ではなく、出来事に対する回答者の経験の認識を捉えたという固有の限界がある。モデルを実用化、発展させることができることがあればであろう。しかし、我々の分析の評価性は、分析チームの訓練と経験の多様性、異なるデータソース(臨床医と患者)の使用、反省性(自らの経験を振り返ること)、外部独立監査、メンバーチェック(参加者に結論を確認してもらうこと)によって高められている。

 

<読後感想>

  • 医師とその積み重ねの患者の両方にインタビューする構造が多々あった。
  • 研究に協力して患者が対象になるのであれば、やはり「最大のモデルは、最新の実践を説明するものではなく、努力目標を示すものはないかもしれない」と思っています。確立した患者とはこのような形にはならないかもしれません。
  • 今回はインタビューで帰納法的に創られたモデルだが、このモデルの応用可能性/今後の性はどう評価すればよいか気になる所。
  • これらのHealingに関する項目はかなり他の論文と共通しているが,この関係図は著者独自なのだろうか?
  • 現在は医師患者関係にのみ焦点を当てていたが、これ以外の患者の家族、医療従事者との関係まで当たり前になって、さらに複雑でダイナミックになるのかと思われた。

resilience_オーストラリアの地方の総合診療研修医のレジリエンス戦略を探求する

Walters L, Laurence CO, Dollard J, Elliott T, Eley DS. Exploring resilience in rural GP registrars – implications for training. BMC Medical Education. 2015 Jul 2;15(1):110.

https://bmcmededuc.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12909-015-0399-x

<リサーチクエスチョン>

オーストラリアのGP研修医のレジリエンスに関する認識と、レジリエンスを維持するための戦略は?

<背景>

一般診療(GP)研修医は、卒後間もないころの三次病院での勤務から、プライマリーケアやより独立したセカンダリーケアといった地域社会での勤務に移行する際に、困難な役割を担うことになる。この移行には、臨床上の不確実性を管理するための学習、患者の期待、若手医師が医療上の決定に対してより独立した責任を負うようになることなどが含まれる。不確実性への耐性の欠如は、医師の燃え尽き、不安、仕事への満足度の低さと関連している[2,3]。地方の診療所でのキャリアを選択した医師には、職業的・社会的孤立の可能性など、さらなるストレス要因やプレッシャーが加わる。

オーストラリアは高度に都市化された国で、89%以上の人が海岸から50km以内に住み、70%以上の人が100万人以上の都市に住んでいる。農村部での医療従事者不足のため、オーストラリア連邦政府は、地方や遠隔地での開業医研修ポストの50%を資金援助している。オーストラリアのユニークな地理と人口の少ない内陸部が、農村部の労働力確保を困難にしている。人口密度の低い小さな町と農村部の中心地との間には大きな距離があり、市民生活や持続可能な二次・三次医療サービスの提供には限界がある。

農村部の医療人材不足に対処するために、多くの国で農村部での研修パスウェイが開発・拡大されているため、農村部のGP研修医の回復力を研究することは重要である。このような経路がGP登録者のウェルビーイングに悪影響を及ぼさないようにすることは、GP登録者に対する社会的責任である。現実的なレベルでは、地方でのジェネラリズムの課題にうまく対処できるGP登録者は、地方での診療への定着率が高くなる可能性があり、このような研修経路の成功率が高まる。

オーストラリアで最近実施された2件の研究では、GP研修医のレジリエンスが中程度に高いことが明らかにされたが、どちらの研究でも、このコホートがどのようにしてレジリエンスを獲得し、維持しているのかについては検討されていない。GPの労働力においてレジリエンスを促進する効果的な戦略には、個人の限界を受け入れること、バランスをとり優先順位をつけること、前向きな個人的・職業的関係を持つことなどが含まれることが実証されている。また、困難な地域で働くオーストラリア人医師は、次のような場合にレジリエンスが高まることが実証されている:サービスを提供する人々を深く尊重する;臨床業務に知的に取り組む;個々の患者の転帰における小さな利益を祝う;勤務時間をコントロールできる.

本研究の目的は、GP登録者のレジリエンスに関する認識と、レジリエンスを維持するための戦略を探ることである。

<デザイン>

質的研究、テーマ分析

<研究方法>

Australian College of Rural and Remote Medicine Independent pathwayのGP研修医と、GPETの資金援助を受けている3つの地域研修プロバイダーのGP研修医が、性格とレジリエンスに関する自己報告式の質問票に回答した
年齢、性別、出身国、配偶者の有無、パートナーの所在地、レジリエンス・スコアなど、グループの多様性を代表する479人のGP研修医から無作為サンプルを抽出した。対象は、Australian College of Rural and Remote Medicine Independent PathwayのGP登録者18名と、地方研修ポストを持つGP地域研修プログラム3名である。

インタビューガイドには、本書の焦点であるレジリエンスに関する3つの質問を含む、いくつかの領域が含まれていた。これらの質問では、研修医が直面するストレス要因についての認識、自身のレジリエンスについての認識、地方の一般診療研修でレジリエンスを維持するために用いた戦略について探ろうとした。


<結果>

18 人の参加者の平均年齢は 37 歳 (範囲は 26 ~ 62 歳) で、平均レジリエンス スコアは母集団の標準と比較して高かった 。 10人は男性、14人はオーストラリア生まれ、8人は地方出身、16人は既婚またはパートナーであり、パートナーの半数はGP登録官のいる地方に移住している。

データからは6つの主要なテーマが浮かび上がった。
研修医の回答を考慮すると、4つの主要な緊張が二項対立変数としてデータから浮かび上がった。研修医は、ウェルビーイングの感覚を維持するために、これらの相反する緊張のバランスをとりながら、中間点を見出そうとしていると述べた.

(図1)レジリエンスぐらつきボードResilience wobble-boardモデル。楽観的な態度、自己反省、メタ認知を通じて緊張に対処し、医学教育がサポートとストレッチを提供する

本論文では、オーストラリアの農村部の開業医研修医におけるレジリエンスの概念モデルとなる、いくつかのテーマを見出した。本研究の研修医は、職業生活のバランスを保つために両立させている4つの個別の緊張について述べた。レジリエンスは、これらの緊張が許容範囲内に保たれている間に維持される。この研究では、緊張間のバランスは各個人に固有のものであり、各緊張の許容限界は個人的な学習によって拡大できることがわかった。著者らはこれを、研修医がそれぞれ個人のレジリエンスぐらつきボードResilience wobble-board」を持っており、他者からのサポートやストレッチを受けながら、個人のスキルを使ってバランスを保つ必要がある、と概念化した。研修医が緊張のばらつきに耐えられるようになるにつれて、ボードの安定性は経験とともに増すことができる。このモデルは、地方のGP研修の状況において国際的に一般化できると思われる。農村部のGP研修医が経験する緊張は、農村部の状況に特有のものではないかもしれないので、このモデルは都市部の一般診療研修プログラムにもさらに一般化できるかもしれない。

研修医は、地方でのGP研修で臨床的緊張に対処できるかどうかは、1. 楽観的な態度 2.自己反省のスキル 3. メタ認知など、バランスをとるためのスキルを持っているか、身につけているかどうかにかかっていると報告した。

レジリエンスは以前から、人生に対する前向きな態度、希望、心理的な達成感と関連している。楽観主義はモデリングや認知行動技法を通じて学ぶことができ、習得感は学習者が地方での診療経験を積むにつれて発達する。レジリエンスは、個人的な反射能力のある医師ほど高まる。Longerneckerの論文によると、GPのトレーニングでは「スキルであり習慣」である自己反省の育成を優先すべきである。

【限界】研究参加者は全員、現在地方の診療所で働いており、研究結果が地方の一般診療所に特有のものかどうかは不明である。参加者が自己選択したため、サンプルがレジリエンスの高い人に偏っている可能性がある。しかし、このバイアスは、GP研修医のレジリエンスの発達を説明する理論的枠組みを開発する際には、むしろ研究結果に役立つ可能性が高い。GP研修医が社会的に望ましい回答をした可能性もあり、面接で与えられた時間内にGP研修医がレジリエンスを十分に考慮することを期待するのは非現実的かもしれない.

<読後感想>

  • 総合診療医に限らず、地方に赴任する医師の基本的な特徴と、それに対してどんなサポートや心構えが必要か、をレジリエンスの視点から読み解いていた。先日のLetterや今自分の進めているプロジェクトに関連しているぶん、非常に参考になった。

  • うまいことバランスを取ることができるかどうかは個人の資質にもよるが、バランスの取り方が「スキルであり習慣」と言われるのは、個人的には非常に救いとなる。

  •  実臨床に落とし込むとなると、例えば、上記のグラつきボードを一つのフレームワークとして、これらの要素ごとにバランスが取れているかどうかの見立てが自分や他者にできたらいいのかな。

修正Delphi法を使用した都市部の一般開業医/家庭医のコンピテンシーリスト

修正Delphi法を使用した都市部の一般開業医/家庭医のコンピテンシーリスト

Mitsuyama T, Son D, Eto M, Kikukawa M. Competency lists for urban general practitioners/family physicians using the modified Delphi method. BMC Primary Care. 2023 Jan 19;24(1):21.

Abstract

背景
近年、世界的な都市化と都市人口の増加に伴い、都市部特有のさまざまな健康問題が顕在化している。したがって、都市部の複雑な健康問題に取り組み、都市部の人々の健康を改善できる総合診療医や家庭医の育成は、現代の最も重要な課題の一つとなっている。しかし、都市部の一般開業医(GP)や家庭医(FP)の能力に関する調査結果は限られていた。この調査は、包括的で内容が検証されたコンピテンシーのリストを特定することを目的とした。
方法
修正された Delphi メソッドを使用して、内容が検証されたコンピテンシー リストを作成した。まず、文献レビューから抽出したコンピテンシーを定性的テーマ分析手法を用いて分析・統合し、34 項目からなる初期コンピテンシーリストを作成した。次に、医師、看護師、患者、医学教育専門家という 4 つの研究参加者グループから 39 人の専門パネリストを集めた。専門パネリストは、ウェブベースのアンケートを通じて、リストへの同意レベルを示し、各コンピテンシーの説明について修正されたコメントを提供するよう求められた。彼らの回答は研究チームによって定量的および定性的に分析され、リストの改訂に使用された。これらのプロセスを繰り返し、合意に達したと判断された時点で調査は終了となった。
結果
Delphi法は3回ラウンド行われた。第1ラウンドでは39人、第2ラウンドでは38人、第3ラウンドでは36人が回答した。コンピテンシーの初期リストは改訂され、第 1 ラウンドの 34 項目から 14 項目に統合され、パネリストによって提案された 6 つの新しい項目と合わせて合計 20 項目になった。第 2 ラウンドでは改訂され、18 項目のリストに統合された。第 3 回目では、18 項目すべてにパネリストの同意が得られたものとみなされ、アンケートは終了した。

結論
私たちは、内容が検証された方法で、都市部の GP/FP のコンピテンシーの包括的な 18 項目のリストを特定した。いくつかのコンピテンシーは、この研究で新たに発見された。本研究の成果は、今後の都市部のGP・FPの育成や都市部の健康問題の解決に役立つと考えられる。


都市部の GP/FP のコンピテンシーの包括的な 18 項目のリスト

  1. 文化的能力

  2. 社会的に恵まれない人への配慮

  3. 家族志向のケア

  4. ケア範囲の調整

  5. 専門医療機関との連携

  6. 細分化された医療の統合

  7. 多職種によるケアの調整

  8. 地域志向のケアー健康増進

  9. 地域志向のケアー緊急ケア

  10. 労働衛生

  11. 感染症

  12. メンタルヘルス

  13. 認知症ケア

  14. 行動変容

  15. 緩和ケア

  16. 組織管理

  17. 生涯学習

  18. 教育