不確実性_医療における不確実性に対処する. ナラティブレビュー
Scott IA, Doust JA, Keijzers GB, Wallis KA. Coping with uncertainty in clinical practice: a narrative review. Medical Journal of Australia. 2023;218(9):418–25.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.5694/mja2.51925
このレビューの目的
- さまざまな種類の不確実性の特徴を明らかにすること
- 不確実性への不寛容に関連する悪影響、臨床医の特徴、臨床状況を定義すること、
- 個人レベルでの不確実性への不寛容を評価する手段を特定すること
- 不確実性を最小限に抑えるために合理的にできることを行った後に、臨床医と患者が不確実性に対処するために使用できる戦略を提示すること
概要
- 臨床医は常に不確実性の中で意思決定を行わなければならない。
- 不確実性の要因には、個人の知識や科学的証拠の不足、実践的理解や能力の限界、対人関係の課題、臨床的な複雑さなどがある。
- 臨床医の不確実性に対する耐性は、個人の特性や臨床状況、感情的要因、社会文化的な規範により異なる。
- 不適応的な反応は、患者ケアや臨床医の健康に悪影響を及ぼす可能性がある。
- 不確実性を完全に排除することはできないが、管理し、患者と共有する方法がある。
不確実性の種類
- 診断の不確実性: 診断が不確定な場合、例えば「小児の発熱が髄膜炎かどうか」という状況。
- 治療の不確実性: 例えば、COVID-19後の慢性疲労やブレインフォグに対する治療法が確定していない場合。
- 予後の不確実性: うつ病の患者が自殺のリスクがあるかどうかの判断など。
- 解釈の不確実性: 臨床検査結果の解釈が困難な場合。
- 手順の不確実性: どの手術を誰が行うべきか判断がつかない場合。
- 倫理的な不確実性: 治療の限界と患者の意思をどう調整するか。
臨床における不確実性の影響
- 臨床では不確実性を認識したり、それが個々の臨床医にどのような影響を与えるかを探ったり、不確実性を軽減するために何ができるかを検討したりすることがあまりにも少ない。専門的なトレーニングでは伝統的に、不確実性よりも確実性に価値が置かれ、不確実性をどのように許容または管理するかよりも、不確実性を最小限に抑える、または排除するかが重視されてきた。
- 臨床医は不確実性を認めず、一般的な慣習や多職種・他の専門家に頼ることがある。
- 不確実性への耐性が低い臨床医は、患者ケアの質を低下させ、誤診や過剰な検査、誤った治療が行われる可能性がある。
- 不確実性が原因で生じるストレスは、臨床医のバーンアウトや職業満足度の低下にもつながる。
不確実性に対する反応の評価
- Physician's Reactions to Uncertainty (PRU) scaleが、不確実性に対する臨床医の反応を評価するために使用される。
- PRUは、不確実性によるストレスや、患者や同僚に対する不確実性の開示への抵抗を測定する。
- PRUを使用して、臨床医がどの程度不確実性を感じ、どのように対応しているかを把握できる。
不確実性への対処戦略(一部修正)
- 自己認識・自己理解
- 自分の不確実性に対する感情や耐性を理解する(PRU scale、事例の振り返り)
- 不確実性を分析
- 科学的(診断・予後・治療)→適切な文献検索・意思決定支援システム・専門家への相談など
- 実践的(ケアシステムの構造・プロセス)→マネージャーや管理者と話し合う
- 個人的(臨床医と患者の関係における心理社会的・実存的・倫理的)→多職種チーム、臨床倫理専門家に相談
- 心がけ
- 確実に知りたいという欲求を捨てる
- 不確実でも、関連性が低い、重大ではない、緊急性が低いものもある
- 認知バイアスに注意(診断エラー学)
- 謙虚さを持ち、自分の限界を認める。解決できない問題に執着せず、助けを求めることも重要。同僚との共有も大事
- 柔軟な対応: 結論を急がず、現時点で利用可能な情報に基づいて決定を下す。確実に知りたいという欲求を捨てる。
- 行動
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事前準備:自分が不確実性を感じやすい状況・内容を特定し、対処法を準備する
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セーフティーネットとフォローアップ:最悪な状況を考慮しておく
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患者と不確実性を患者と共有する: 適切な形で不確実性を患者に説明し、信頼関係を維持することが大切。
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不確実性を患者に伝える方法
- 準備
- 患者の「感情・希望・解釈・影響」を明確にする
- 患者の身体的・精神的苦痛を承認する
- 事前に警告する
- 患者に合わせてコミュニケーション方法を調整する(例:今日全て話し合うかどうか)
- 不確実性を伝える
- 患者へのサポート
- 協力し、対処戦略を立てる(相談相手などの資源・情報・考える時間…)
- コントロールの感覚を与える
- 希望を与える
- 不確実性に対する患者の感情的反応を促進し、サポートする
- 継続的にフォローすることを強調する
結論
- 不確実性は臨床実践において避けられない要素であり、臨床医はそれを認識し、管理する能力を身につける必要がある。
- ウィリアム・オスラー卿「医学とは不確実性の科学であり、確率の芸術である」
読後感想
- 不確実性に対処する具体的な方法を改めてレビューで読み頭の整理がついた。特に不確実性の分類の統合はあまり意識したことがなかったので良かったと思う。
- 個人的には、患者のサポートのきめ細やかさが気になった。希望を与える、対処戦略の多彩さなどはもっと増やしていきたい。
- 「不確実性への耐性をセルフチェックする」は面白そう。
- 私の指導医は「ネガティブ・ケイパビリティ」や「中腰力」が大事と言っていた。戦略はもちろんのこと、不確実な状況を飲み込み、関わり続けるという心構えも同時に必要と感じた。
- 不確実性は家庭医療でも非常に重要なトピックなので、いずれ不確実性についてももう少し深めてみたいと思う。
- 書籍であれば「医療における不確実性をマッピングする」、日本の論文であれば「宮田靖志. プライマリ・ケア現場の不確実性・複雑性に対処する. 日本プライマリ・ケア連合学会誌. 2014;37(2):124-32.」は読んだが、他はまだ。