Green LA. The Research Domain of Family Medicine. Ann Fam Med. 2004 May;2(Suppl 2):s23–9.
- 概要
- 1. 医療ケアの生態学
- 2. 原因の領域
- 3. 家庭医の仕事の性質とは?
- 4. (一般的な)研究の分類から考える
- 5. 医学知識とは?
- 6. 知識の輪 Generalist wheel
- 著者コメント
- 読後感想
- 今回に関連しそうな資料
概要
- 家庭医療の研究領域は広大であり、以下の観点から探求することができる。
- 医療ケアの生態学:医療環境の相互作用に焦点を当てる。
- 原因の領域:人々が病気になる原因や健康を取り戻すプロセスを探求する。
- 家庭医の仕事の性質:初診、コンテクストを考慮した意思決定、技術開発など。
- 研究の分類:基礎研究、臨床研究、医療政策研究など。
- 異なる形での医学の理解:個人や集団の内的・外的現実をどのように理解するか。
- 知識の輪Generalist wheel:家族医療研究が反復的に知識を進化させるプロセス。
- 家庭医学の中核となる研究事業は、世界的にまだ制度化されていない。 この論文の目的は、家庭医の研究領域を特徴づけるために、他の人たちが何十年にもわたって熟慮してきたことを参考にすることで、この学問的欠陥をどのように是正するかについての考察に貢献することである。
- その意図は、整然とした正解を発表することでも、可能性を網羅することでもない。 むしろ、6つの視点を提示することで、重要かつ発展すべき家庭医学研究の領域があることを明らかにすることを意図している。
1. 医療ケアの生態学
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前提:1000人中、800人/月が体調不良を訴え、327人/月がケアを求め、217人/月が診療所を訪れる[N Engl J Med. 2001;344:2021-2025]
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家庭医は、月間で約4分の1の住民が家庭医と接触する環境を研究する事が可能。
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例えば、病気の最初の兆候や予防策などの研究につながりやすい

1ヶ月の間に1000人の住民がどう医療に関わるか?
2. 原因の領域
- 前提:疾患の因果関係を考えるには、遺伝子・細菌などの生物医学的なものだけでは十分ではないという考え [White KL. Lancet. 2000;355:1904–1906.]
- 家庭医は、病気の原因、病気が続く理由、治療環境の影響など、家族医療の現場でしか解明できない問いに答える絶好の立場にある。
3. 家庭医の仕事の性質とは?
- 前提:医療の実践の場は、家庭医学の研究領域を概念化するための組織的枠組みを提供する。仕事の性質を考えると、家庭医療の研究に結びつく。
- 家庭医療を特徴づける仕事リスト[Rudebeck CE, Scand J of Pri Health Care. 1992;Suppl 1:1-87.]
- ファーストコンタクトの窓口
- 病気だけではなく人もみる
- 家族志向のケアを行う
- 患者の生活背景もみる
- 疾患予防・健康促進
- 患者の自律性を奨励する
- あらゆるタイプの問題を受け入れる
- 家庭医療で解決すべき未解決問題 [McWhinney IR. Newbury Park, London, and New Delhi: Sage Publications; 1991:1-12.]
- プライマリ・ケアに適切な初期診断技術の開発 ※1
- 家庭医療の理論構築 ※2
- 病気の自然史の探求 ※3
※1.マクウィニーは技術という用語を、迅速診断検査、臨床処置、モニタリング装置など、手で使う道具以上の意味として使い、特定の目的、例えば、予防、在宅ケア、ケアの統合を達成するための診療組織のあり方を含んでいる。
そのためには、家庭医がどのように病態を診断し、管理しているのか、家庭医が診療の中でどのように学んでいるのか、家庭医がどのように誤った助言に反論しているのか、などを明確にする必要がある。
※2.マクウィニーは家庭医学の基礎となる理論を、人間の経験、人生の出来事、人間関係のつながり、そしてそれらが健康や病気とどのように相互作用するかということであると示唆した。
※3. 病気の自然史:更に発展するために評価すべき方法として、人々が診察に訪れる理由、なされる診断、追求される評価と治療、結果の尺度を分類し、カウントすることである。家庭医療でのCommon disease, Common problemのリストは開発されており、これらをマスターすることが家庭医であることの重要な部分であることは広く認められている。症状や問題を長期にわたって追跡し、エピソードに整理すると、症状の自然史や時間の経過に伴う症状や問題の変遷を調査できる、より豊富な経験を知ることができる。
(Patient Experience: PX的な視点も含む?)
4. (一般的な)研究の分類から考える
- 家庭医療の研究がプライマリ・ケアのレベルに重点を置いていることは間違いない。しかしプライマリ・ケアのみに限定しなければならない理由もない。
- 家庭医療の研究は、基礎研究、臨床研究、医療サービス研究、政策研究、教育研究に分類されるが、これらの全てが家庭医療に関連している。
5. 医学知識とは?
- 前提:知識と研究は密接に関わっている。家庭医の知識の整理は、研究の整理に役に立つ。しかし過去100年の間に、医学は生物医学的な科学によりすぎているという批判もあり。
- 一つの視点:Wilburは知識を4象限に分類した [Wilbur K. Boston, Mass: Shambhala Publications, Inc; 1996.]
- 医学的知識は、個人や集団の内的現実と外的現実を理解することが重要であり、家庭医は、これらの異なる知識の探求に優れている。大事なのは、これらの方法を、患者にとって意味のある・首尾一貫した全体にどう統合できるかである。

6. 知識の輪 Generalist wheel
- 前提:家庭医療は、他分野で発見された知識を実践に応用するだけでなく、実践から新たな知識を発見するプロセスも含む。反復的に知識を深め、実践と研究が相互作用する、という考え方
- この概念は、知識の輪Generalist wheelという概念に拡大する事ができる[Stange KC, et al. Fam Med. 2001;33:286-297. ]

※ここの第1〜第4象限は、5の医学知識の分類(内的現実/外的現実、個人/集団)とリンクしている。
※この図で見ると、現在の医療は、第4象限(疾患)に偏りすぎているのだろう。第1〜2象限の内的現実は家庭医療っぽいと思う。
※この輪は、研究のみならず、医療の質向上としても応用可能。
例えばこの図に照らし合わせると、臨床医が知を高める(第1象限)には、ジャーナリング(日々の臨床での気づきや反省、感情を振り返って記録すること)や、リフレクションが必要になる(≒家庭医療におけるポートフォリオか)
著者コメント
- 1−6の視点は広大だが、これで仮定医療研究の全てを説明できるわけではない。
- 家庭医療は一つの臓器、一つの疾患に焦点を当てていないため、研究領域に迷いが生じやすい。
- 家庭医の多くはGeneralistではあるが、こと研究においては焦点をしぼって継続的に取り組む必要がある。
- 家庭医療の研究領域のような広大な領域の探求を成功させるには、好奇心、勇気、集中力、訓練、協力、忍耐力、回復力、そして献身が必要である。
- 家庭医療の研究領域は広大であり、最適な科学的方法を用いて探求する必要がある。これにより、家庭医療に関わる世界のあらゆる人が恩恵を受ける可能性がある。
読後感想
- 先日の北海道家庭医療学センターの勉強会で出てきた「Generalist wheel」ってなんだ?という疑問から読み進めてみた。知識の4象限の理解がなければよく分からなかったので、少し順番を移動してわかりやすくしている。図の日本語訳は私の拙い理解で作ったので、出来れば原文を読んでほしい。
- 改めて家庭医療という領域の広さを感じた。しかし一定の物差しや地図ができると、少し論文などの整理がしやすくなりそうだ。Generalist wheelはあくまで一つの視点だが、かなり便利そう。私の今行っている研究はおそらく第1象限か。
- 第1象限についてもまだ理解が足りない。「Inner Consultation内なる診療」をまた読み解いてみようかな。
- 加えて、「3. 家庭医療の仕事の性質」についてはまだ私の中で整理できていない。6+3が羅列されているように見える。これの理論的基盤を読み解きながら、他人に説明できるようになるのが次の目標。
今回に関連しそうな資料
草場鉄周(監訳). Inner Consultation 内なる診療. http://kai-shorin.co.jp/product/sc001.html
日本プライマリ・ケア連合学会(監修). プライマリ・ケアの理論と実践 https://www.jmedj.co.jp/premium/pcriron/
金子惇(翻訳). プライマリ・ケア研究 何を学びどう実践するか. https://www.nanzando.com/products/detail/04131